1ページ 広報誌 SPAN2022 第8号 2022年7月発行 ~ 視覚障害者のPC・ICT利用を進めるための掛け橋となることを目指して ~ ICTで視覚障害者の社会参加と就労を支援 SPANは 視覚障害者のSの略 パソコンのPの略 アシストのAの略 ネットワークのNの略 デジタル社会への思い ~ 誰一人取り残さないデジタル社会を目指して ~ 国は、新たにデジタル庁を設置し、全ての国民がデジタル技術とデータ活用の恩恵を享受し、安心で豊かな暮らしを実感できるデジタル社会の実現に向けた取組みを開始しました。 当然、そこには視覚障害者も含まれますが、現状では、視覚障害者のデジタル技術の利用は一般の人と比較して進んでいません。 その大きな要因は、デジタル技術がもたらす情報は視覚に頼るところのものが多く、視覚障害者は、目で見るのが困難な点でしょう。 しかし、それらはAI(人工知能)などの技術により少しずつ補えるようになってきており、ハード・ソフト面では可能性は広がってきています。 ただ、そうした技術を視覚障害者に伝える環境は必ずしも十分ではなく、それがどこまで整うかが、視覚障害者のデジタル利用を進めるカギだと思います。 私たちSPANは、微力ですが、視覚障害者にデジタル技術を伝える活動を通して「誰一人取り残さないデジタル社会」を目指していきます。 画像1:デジタル化社会をイメージした画像:都会の夜空にデジタルをいめーじさせる様々なアイコンが光とともに飛び散り、中央の光の中に人型のシルエットが浮かんでいる。アイコンには、AI、パソコン、電波、電子通貨、ネットショッピングカートなど。 画像1終わり SPANの活動理念* SPANは、1999年11月に発足し、2001年にNPO法人の認証を受け、視覚障害者のパソコンやICT(情報通信技術)の利用が快適・積極的に進むよう、点在する組織や情報を繋ぎ合わせることを目指す有志によって活動を続けています。 SPANの特徴と活動* ・特徴 視覚障害者と晴眼者が同じ立場で活動している ・ 初級講座から職業訓練まで、幅広いニーズに応えられる ・ Microsoft Officeのマニュアルなど、豊富なテキストを制作 ・ 通信アプリを利用した遠隔講座など、多様な講習形態に対応 ・ パソコンやスマートフォン・タブレットPCなど、最新の技術にチャレンジ 活動 図:9つの活動  サポートスタッフへの講習会の開催  他の関係団体の設立及び運営支援  機関紙の発行  PC教室開催と普及活動  個人や団体、行政との情報交換  社会参加と就労を支援  ハード/ソフトウェアの評価及び提言  PC活用促進の情報収集と提供  その他の事業 図終わり 2ページ これまでの活動 活動実績 2021年1月~2022年5月 表1 講座・職業訓練等                     2021年の数/2022年の数 遠隔土曜講座 PowerPointをテーマに1回/0回 実施 遠隔ワンポイント 講座 Microsoft Office、Googleアプリなどをテーマに14回/6回 実施 個人対象講座 グループ講座 受講する方のニーズに応じた内容で14回/4回 実施 遠隔個人講座、遠隔グループ講座 受講する方のニーズに応じた内容で64回/28回 実施 日商PC検定 受験対策コース オンラインで25名/9名 に対し実施 無償での遠隔 就労PCサポート 受講者のニーズに合わせて11名/6名 に対し実施 インストラクター 養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として1回/2回 実施 タブレットサロン iPhone、iPadを学ぶ場としてオンラインで9回/4回 実施 在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を11社/5社 に対し実施 ジョブコーチ支援 在職中の視覚障害者への就労支援を250回/110回 実施 企業研修 在籍する視覚障害者への職業研修を3社/2社 に対し実施 自治体、企業・団体からの委託によるパソコンやタブレットなどの講座を8回/3回 実施 イベント等     視覚障害者就労支援機関の情報交換会に参加  2021年 視覚障害者職業スキルアップセミナー Googleアプリをテーマに実施  2021年 企業が主催するランチタイムイベントに参加し、SPANの活動を紹介 2022年 isee! Working Awards 2022においてアイデア賞を受賞 2022年 テキスト制作・情報提供 立体イメージプリンターを活用してグラフイメージの立体資料を制作し、提供 2021年 表1終わり 写真1:SPANの教室(無人の教室、パーティションで仕切られた机の上にパソコン) 写真2:遠隔講座 SPANの教室からオンライン講座中 写真3:isee! WorkingAward2022 公益社団法人 Next Visionによるオンライン授賞式参加のみなさん 写真終わり これからの活動 2022年活動予定 (6月~12月) 表2 講座・職業訓練等 遠隔土曜講座 Microsoft Officeなどをテーマに計画 遠隔ワンポイント講座 Microsoft Office、Googleアプリなどをテーマに計画 遠隔個人講座、 遠隔グループ講座 受講者からの依頼によりオンラインでの講座を実施 インストラクター養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として計画 タブレットサロン iPhone、iPadを学ぶ場として計画 在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を計画 ジョブコーチ支援 在職中の視覚障害者への就労支援を計画 日商PC検定受験対策コース 日商PC検定の受験を目指す方を対象に実施 イベント等 第30回視覚障害リハビリテーション研究発表大会(名古屋)  ポスター発表で参加予定 ロービジョンセミナー  SPANの活動紹介で出展予定 視覚障害者職業スキルアップセミナー  職業スキルの向上を目的に開催予定 表2終わり 3ページ 会員に「ちょっとインタビュー」 会員 神田 信 さん 50代 男性 全盲の入り口 眼鏡およびその関連商品を主に取り扱う 眼鏡専門店チェーン(株)パリミキ勤務  あきらめる前に相談を! Q:SPANで受講した講座や支援は? A: 在職者訓練を受けた後、仕事に応じたスキルを習得するために引き続きジョブコーチを受けています。 Q:感想はいかがでしたか? A: とても助かりました。おかげで就労継続することができました。これらの制度の活用ができなかったらどうなっていたことか。 Q: どのような仕事をされていますか? A: 毎年開催している川柳コンクール、静岡県で始めた各店舗を巡回しての福祉機器と盲導犬体験、遮光眼鏡カラー確認の為の貸し出し制度等の企画を行っています。 Q: 趣味など生活の様子について教えてください。 A: 視力が低下する過程で出会った障害者スポーツのレガッタ(4人乗りのボート)でアジア大会やワールドカップに出場し、トライアスロンでは国内大会で優勝しました。現在は、病気のことが知りたくてJRPSに、仕事のことが知りたくてタートルの会に、制度のことが知りたくて日本視覚障害者団体連合に所属して活動しています。 Q: みなさんへのメッセージをお願いします。 A:見えなくなったからとすぐに就労をあきらめないでください。見えにくくなった人に必要な情報が確実に届き、全国どこに住んでいても誰もがジョブコーチや在職者訓練を受けることができる世の中になってほしいです。 聞き手:平川純 * 第四回 ロービジョン・ブラインド川柳コンクール特設サイト https://www.paris-miki.co.jp/lv-senryu/ 画像2:トライアスロンのイメージ画像、自転車、水泳、マラソンのシルエットイラスト 画像3:優勝カップイラストキラキラ 会員 米井 裕子さん 女性 全盲 ヘルスキーパーで就職し、現在は一般企業(金融) の事務職とヘルスキーパー業務を兼任 活かしていきたい、今出来ること Q: 視力の状態と、現在のお仕事について教えてください。 A:現在は全盲です。元々病気があったようですが、大人になるまで自覚症状がありませんでした。ヘルスキーパーとして現在の勤め先に就職しました。通勤事故で半年間休職した療養中にパソコンスキルを上げようと思ったことと、コロナ対策でマッサージの仕事が縮小したことから、職場に復帰した現在は、事務職にも従事しています。 Q: SPANで受講した講座や支援は? A: 療養中に就労支援機関をあたりましたが、在職中に受けられるサービスがなく、SPANの個人講座を紹介されて受講しました。その後、日商PC検定2級の講座の第1期も受講しました。 Q: 感想はいかがでしたか? A: 個人講座では、学びたい内容をピンポイントでリクエストして教わることができたのがよかったです。以前からSPANのホームページでOfficeのマニュアルを使って勉強していましたが、直接教わることで、活用の幅が広がるような具体例やヒントをもらえて、職場でもできる仕事が増えました。日商PC検定の講座は、先生一人に対して複数での受講でした。仲間との交流が生まれて、試験に向けての刺激になりました。学ぶという大きな目的がある中にも、人と人との温かい繋がりを見出せたことが大きな魅力でした。 Q: 米井さんは、最近SPANに入会してくださり、講座のアシスタントデビューも果たされました。今後、取り組みたい活動などありますか? A:日々いろいろな方に助けてもらっているので、私にもできることで社会に還元したいなと思うようになりました。一人で勉強していた時よりもたくさんのことが吸収出来た経験から、このサポートの輪が循環していくことを願って、少しずつお手伝いしています。講座を受けて感じた、「出来なかったことが出来るようになる喜び」が広がっていく場を作っていきたいです。 聞き手:上田 喬子 画像4:パソコン教室風のイラスト。ほのぼの画風、受講生風の3人がパソコンの前でにこにこ。 4ページ SPANの活動紹介 立体資料の制作・提供   SPANは、立体イメージプリンター「EasyTactix」を、多くの方からのご寄付により購入しました。これは、WordやExcelなどのデータを浮き上がらせて立体化することにより、触覚で内容を確認できるようにする機器で、点字の印刷も可能です。 これを活用し、グラフなどの複雑な画像データの立体資料を制作して、日商PC検定2級受験対策コースを受講する方に提供しているほか、企業等からの依頼による立体資料の制作を行っています。 今後は、地図や部屋の配置図など、より実用的な立体資料を提供することにより、視覚障害者の情報入手を支援していきます。 写真:立体イメージプリンター「EasyTactix」 パソコンのデータを専用用紙に印刷すると文字などが浮き上がり、触覚で内容が把握できる SPANでは、職業スキルの向上を目指す方はもちろん、ICTスキルを高めたい方、また支援をする方のために 以下の講座や訓練、支援を実施しています。  ・個々のニーズに応じてマンツーマンで学ぶ個人対象講座  ・数名で同じテーマを学ぶグループ講座  ・テーマを決めて実施する土曜講座、ワンポイント講座  ・通信アプリZoomなどを利用した遠隔講座(個人・グループ・団体)  ・就労中の視覚障害者を対象とした在職者訓練、社員研修  ・就労する視覚障害者を、職場を訪問して支えるジョブコーチ支援  ・視覚障害者を支援する方を対象としたインストラクター養成講座 *ご寄付のお願い* 私達は視覚障害者がICTを使いこなすことにより、自立し社会参加、就労していけるよう活動していますが、公的な補助を受けず自主運営している団体です。皆様からのご寄付が活動を維持するための貴重な財源となっています。 この活動に共感していただける方のご支援をお願い致します。 振込先: 郵便振替口座 00110-4-183315 スパン寄付金口 写真:SPANの教室、講習の様子 「スカイプラザ」の愛称で呼ばれ、コンパクトでアットホームな雰囲気です 写真終わり 奥付 2022年7月1日 発行 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 〒108-0014 東京都港区芝5-29-22 フェリス三田1103 電話&ファクシミリ 03-6435-1614 E-mail office@span.jp URL http://www.span.jp/ Facebook https://www.facebook.com/span.jp Twitter https://twitter.com/npo_span 以上 広報誌 SPAN2022 第8号 終わり