広報誌 SPAN2017 第4号 2017年5月発行 ~ 視覚障害者のPC・ICT利用を進めるための掛け橋となることを目指して ~ ICTで視覚障害者の社会参加と就労を支援 SPANは 視覚障害者のSの略 パソコンのPの略 アシストのAの略 ネットワークのNの略 視覚障害者がものを「見る」には!? SPAN理事長 北神あきら(きたがみあきら)  視覚障害者にとって「ものを見る」ことは非常に厳しいハードルですが、技術の発達は日進月歩。『AIを活用し、いかにすれば視覚障害者が身の回りの世界を把握して「見る」ことを支援できるか』を追求しているICT機器や機能が登場しつつあります。  一つ目はOffice365のWordやPowerPoint における「視覚障害者向けに写真説明を自動生成する機能」です。文書中の写真を右クリックして 《自動代替テキスト》 を選ぶと、ソフトの側で写真の中の物体を認識。その写真全体を説明する最適な表現を人工知能が見つけ出し、これをウィンドウズのスクリーンリーダーが読み上げてくれるものです。SPANはOffice365の操作マニュアルをマイクロソフトと共同で作成しているので、上記の機能は取り組めるのではと考えています。  二つ目はイタリアのベンチャー企業が米NVIDIA社の支援のもとに開発した「ホルス」というウェアラブルデバイスです。イヤフォンとステレオ小型カメラを備えるヘッドセット、そしてベルト等に装着するスマホサイズの本体で構成され、カメラが撮影した画像を人工知能エンジンが解釈し、視覚障害者であるユーザーにイヤフォンから音声アドバイスを行ってくれます。これを使用することで、視覚障害を持つ人でも製品ラベルや本を読んだり、道でばったり会った友達が誰なのかわかったり、道路の横断歩道や障害物について知ることができるようになると謳っています。  実際の浸透にはまだ時間がかかりそうですが、これらが早く身近なものになり、より一層バリアフリーが進むことを期待したいものです。(写真はHORUSホームページより転載) SPANの活動理念* SPANは、1999年11月に発足し、2001年にNPO法人の認証を受け、視覚障害者のパソコンやICT(情報通信技術)の利用が快適・積極的に進むよう、点在する組織や情報を繋ぎ合わせることを目指す有志によって活動を続けています。 SPANの特徴と活動* ・特徴 ・ 視覚障害者と晴眼者が同じ立場で活動している ・ 初級講座から職業訓練まで、幅広いニーズに応えられる ・ Microsoft Officeのマニュアルなど、豊富なテキストを制作 ・ Skypeを利用した講座など、多様な講習形態に対応 ・ Windows10やスマートフォン・タブレットPCなど、最新の技術にチャレンジ 活動 図:9つの活動  サポートスタッフへの講習会の開催  他の関係団体の設立及び運営支援  機関紙の発行  PC教室開催と普及  個人や団体、行政との情報交換  社会参加と就労を支援  ハード/ソフトウェアの評価及び提言  PC活用促進の情報収集と提供  その他の事業 図終わり 2ページ目 これまでの活動 2016年活動実績(1月~12月) 表1:講座・セミナー等 ○土曜講座 ワンポイント講座 Windows 8.1、Word2013、Excel VBA、NVDANetReaderなどをテーマに7回実施 ○個人対象講座 受講する方のニーズに応じた内容で58回実施 ○視覚障害者職業スキルアップセミナー 職場で求められるPCスキルをテーマに開催 ○インストラクター養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として6回実施 ○東京しごと財団在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を6回実施 ○社員研修 新入社員研修、日本ユニシスグループからの委託により、視覚障害者について講義 ○第25回視覚障害リハビリテーション研究発表大会(静岡市) ポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー SPANの活動紹介で出展 ○仙台市で視覚障害者就労促進のためのフォーラム、支援者研究会、職業講習を実施 ○大分市でiPhone、iPadの体験会を実施 表2:情報提供 ○Windows 10操作マニュアルを制作してWebサイトで公開 ○Office 365操作マニュアルを制作してWebサイトで公開 ○広報誌「SPAN2016(第3号)」を発行 2017年活動実績 (1月~5月) 表3:講座・セミナー等 ○スタッフ派遣 外部団体が主催するWindows 10体験セミナーにスタッフを派遣 ○個人対象講座 受講する方のニーズに応じた内容で約20回実施 ○ワンポイント講座 Excel2013のグラフをテーマに実施 ○インストラクター養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として3回実施 ○日本ユニシス ニューイヤーコンサート 日本ユニシスが主催するコンサートでQRコードを利用したプログラム読上げのデモに協力 ○東京しごと財団在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を3回実施 ○仙台市で視覚障害者就労促進のための職業講習を2回実施 写真1:新入社員研修 日本ユニシスグループの新入社員研修で、視覚障害者についての講義を行いました。 写真2:仙台市視覚障害者就労支援フォーラム フォーラムではさまざまな発表がありました。写真は、視覚障害者を雇用する企業の方の発表。 写真3:大分市 iPhone、iPad体験会 多くの方が参加されました。写真は、音声を聴きながらiPhoneの画面をタッチ操作する参加者。 写真終わり これからの活動 2017年活動予定 (6月~12月) 表4:講座・セミナー等 ○夜間講座・土曜講座 PowerPoint、Wordでの画像操作などをテーマに実施 ○タブレットサロン 5月から11月まで6回開催 ○ワンポイント講座 Word・excel 2013の基本操作などをテーマに実施 ○新入社員研修 IT企業からの委託により、視覚障害者についての講義で協力 ○視覚障害者就労促進事業(札幌市) フォーラム・支援者向けセミナーなどを開催 ○インストラクター養成講座 7月、9月、11月の第2日曜日に実施 ○第26回視覚障害リハリリテーション研究発表大会(横浜市) ポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー SPANの活動紹介で出展 表5:情報提供 ○インストラクター養成講座テキストを制作 表終わり 3ページ 会員に 「ちょっとインタビュー」 ○会員 堀越雅也(ほりこしまさや)さん 顔写真あり 2015年入会 Q: SPAN入会のきっかけは? A: 四谷にある社会福祉法人 日本盲人職能開発センターで行われたパソコン講習会に参加してSPANのことを知り、入会することにしました。 Q: 現在、SPANでどのような活動をしていますか? A: ワードやエクセル、VDAなど、仕事に生かせるような興味のある講座に参加しています。 Q: 現在、どのような仕事をされているのですか? A: 民間の会社で法律関係の事務をしています。 Q: 今後、SPANのどのような講座に参加したいと思いますか? A: 会計や簿記、税務の知識を身につけることができるような講座があれば参加したいと思います。 Q: 普段、SPANの活動以外に、趣味などどのようなことをされていますか? A: 育児の合間にバンバンというマラソンサークルに参加しています。6月には葛飾の柴又で行われるウルトラマラソン(100km)に参加します Q: 今後のSPANに期待することや思うことがあればお聞かせください。 A: SPANの会員には知識のある人が多く集まっているので、それらのある程度知識のある人たちで「今後のスクリーンリーダーについ」てなど、テーマを絞った意見や情報交換などができれば励みになるだろうと思います。また、SPANのHPで公開されているマニュアルを便利に活用させてもらっています。SPANのような非営利の団体の存在は貴重だと思います。ぜひ、長く続けてほしいです。 聞き手:平川純 ○会員 末吉和子(すえよしかずこ)さん 顔写真あり  2009年入会 Q: 入会のきっかけを教えてください。 A: ボランティアで特養に行っていたとき、視覚障害者の方と知り合いました。彼女は言語障害もあり、なにかコミュニケーションが取れる方法はないかと、ネットを検索してSPANに出会いました。インストラクター養成講座のことを知り受講しここで初めて音声ソフトを体験させていただきました。 みなさんが、しっかりと自分の考えを持ち、得意分野を十分生かして活動をされていることに共感しました。視覚障害者の方たちと接する上で必要と考えガイドヘルパーの資格も取りました。 Q: SPANではどのような活動に参加されていますか? A: インストラクター養成講座のサポートをしています。養成講座を始めたころはパソコン初心者の方が多かったように思いますが、最近はスキルの高い方の受講も増えています。他業種の方と接することができ、多くの情報も得ることができます。 最近感動したことがあります。ある企業の若い方が6人受講され、全盲の講師の巧みなパソコン操作に皆さん感動されていました。画面のカーソルの動きを見ながら感心の声が上がるのを見て、こんな場面をもっと多くの企業に知ってもらいたいと強く思いました。 Q: 視覚障害者向けの様々な講習にスタッフとして携わっていらっしゃる末吉さんサポートへの思いや工夫されていることはありますか? A: Word、Excel、PowerPoint、iPhone、iPadなど、画面のイメージをつかむことは大事だと思い、自分なりに工夫をしてそれぞれの立体図を作りました。 Q: 普段、SPANの活動の他になさっていること、趣味などお聞かせください。 A: 以前は山歩きやスキーをしていたのですが、柴犬の「ハナ」と二人暮らしになり、家を空けることができずガーデニングに精をだしています。 最近残念なことは、「筆」を持つ機会がなくなったこと。書道をしていたので、自分らしい字を追及したり、しおりにして知人にプレゼントしています。 Q: SPANには、末吉さんのように、視力がありサポートができるインストラクターを目指して入会される方もいらっしゃいます。これから、サポートに携わってみたいと考えている方に、メッセージをお願いします。 A: マウスしか使っていない人は、ちょっと戸惑うことが多いかと思います。私も始めたころは続けられるかなと思いました。パソコンは継続しなければ慣れないと、頑張っている生徒を見て、続ける力をもらった気がします。 聞き手:上田喬子 4ページ目 SPANの活動紹介 視覚障害者の就労を支援 SPANは、職業スキルの向上を通して視覚障害者の就労を支援しています。 具体的には、東京しごと財団からの委託による在職者訓練の実施、各種講座やセミナーなどによる職業スキルアップの場の提供、企業向けビデオやフォーラムの 開催などによる社会への啓蒙活動のほか、個人や企業からの就労に関する相談にも応じています。 そして、より多くの視覚障害者が労働を通して社会に貢献していくことを目指しています。 写真:視覚障害者職業スキルアップセミナー パネルディスカッション 写真終わり SPANでは、職業スキルの向上を目指す方はもちろん、ICTスキルを高めたい方、また支援をする方のために以下の講座を実施しています。  ・個々のニーズに応じてマンツーマンで学ぶ個人対象講座  ・数名で同じテーマを学ぶグループ講座、  ・無料通信ソフトSkypeやFacetimeなどを利用した遠隔講座  ・就労中の視覚障害者を対象とした在職者訓練、社員研修  ・テーマを決めて実施する夜間講座、土曜講座、ワンポイント講座  ・視覚障害者への指導をする方を対象としたインストラクター養成講座 ○ご寄付のお願い SPANは公的な補助を受けず自主運営している団体です。皆様からのご寄付が活動を維持するための貴重な財源となっています。私たちは視覚障害者がICTを使いこなし、自立と社会参加、就労していけるよう活動しています。 この活動に共感していただける方のご支援をお願い致します。 振込先: 郵便振替口座 00110-4-183315 スパン寄付金口 ○毎日クリックでSPANを応援 「いいね!」「シェア」で「NPO法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク」=SPANに支援金を届けることができます。 以下のURLまたは「gooddo span」で検索。  SPANホームページにはリンクがあります。       「http://gooddo.jp/gd/group/span/?from=fbn0」 「応援する」ボタンをクリックしてください ○写真:SPANの教室、講習の様子 「スカイプラザ」の愛称で呼ばれ、コンパクトでアットホームな雰囲気です 写真終わり 奥付 2017年5月31日 発行 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 〒108-0014 東京都港区芝5-29-22 フェリス三田1103 電話&ファクシミリ 03-6435-1614 E-mail office@span.jp URL http://www.span.jp/ Facebook https://www.facebook.com/span.jp Twitter https://twitter.com/npo_span 以上 広報誌 SPAN2017 第4号 終わり