広報誌 SPAN2018 第5号 2018年7月発行 ~ 視覚障害者のPC・ICT利用を進めるための掛け橋となることを目指して ~ ICTで視覚障害者の社会参加と就労を支援 SPANは 視覚障害者のSの略 パソコンのPの略 アシストのAの略 ネットワークのNの略 視覚障害者の就労における職業訓練の役割 SPAN理事長  北神(きたがみ) あきら   視覚障害者の就労は、以前と比べると改善されていますが、まだまだといった感じです。 その原因の一つが、職業訓練の体制が不十分だということが挙げられると思います。  2017年に行った調査では、就労中の視覚障害者で職業訓練を受けた人は半分に達していません。理由は、訓練施設が近くにないことや、訓練の情報を知らなかったという点が挙げられていました。  そうした現状を踏まえSPANでは、職業訓練の充実が視覚障害者の就労を促進させるために重要だと考え、2016年には仙台市で、2017年には札幌市でフォーラムとセミナーを開催し、その後に各3回の職業講 習を実施してきました。  2018年にはこの活動を神戸市で実施し、職業訓練が果たす役割と必要性を広く 社会に発信していきたいと考えています。  写真は札幌市で行われた職業講習の様子です。 SPANの活動理念* SPANは、1999年11月に発足し、2001年にNPO法人の認証を受け、視覚障害者のパソコンやICT(情報通信技術)の利用が快適・積極的に進むよう、点在する組織や情報を繋ぎ合わせることを目指す有志によって活動を続けています。 SPANの特徴と活動* ・特徴 ・ 視覚障害者と晴眼者が同じ立場で活動している ・ 初級講座から職業訓練まで、幅広いニーズに応えられる ・ Microsoft Officeのマニュアルなど、豊富なテキストを制作 ・ Skypeを利用した講座など、多様な講習形態に対応 ・ Windows10やスマートフォン・タブレットPCなど、最新の技術にチャレンジ 活動 図:9つの活動  サポートスタッフへの講習会の開催  他の関係団体の設立及び運営支援  機関紙の発行  PC教室開催と普及  個人や団体、行政との情報交換  社会参加と就労を支援  ハード/ソフトウェアの評価及び提言  PC活用促進の情報収集と提供  その他の事業 図終わり 2ページ目 これまでの活動 2017年1月~2018年5月活動実績 表1:講座・セミナー等 ○土曜講座ワンポイント講座 Windows 10、Word、Excel、PowerPointなどをテーマに8回実施 ○個人対象講座 受講する方のニーズに応じた内容で68回実施 ○インストラクター養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として7回実施 ○タブレットサロン iPhone、iPadを学ぶ場として12回実施 ○在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を15回実施 ○iPhone, iPad講習会(高岡市)を実施 ○視覚障害者への職業講習(仙台市)を2回実施 ○視覚障害者への職業講習(札幌市)を実施 ○自治体、企業・団体からの委託によるパソコンやiPad等の講座を6回実施 ○企業の新入社員研修において講演とPC等のデモで協力 表2:イベント等 ○第26回視覚障害リハビリテーション研究発表大会(横浜市) ポスター発表で参加 ○ロービジョンセミナー SPANの活動紹介で出展 ○視覚障害者職業スキルアップセミナー 職業訓練をテーマに開催 ○札幌市で視覚障害者就労促進のためのフォーラム、支援者研究会を実施 ○企業が主催するコンサート2回において、QRコードを利用したプログラム読上げのデモで協力 ○チャリティー販売会(日本ユニシス)に参加 表3:テキスト制作・情報提供 ○インストラクター養成講座テキストを制作 ○画面説明マニュアル(Windows 10)を制作してWebサイトで公開 写真1:視覚障害者職業スキルアップセミナー 「職業訓練」をテーマに実施されたセミナーで発表する就労中の視覚障害者の方 写真2:第26回視覚リハ大会ポスター発表 「職場で求められるPCスキル」をテーマに行ったポスター発表で説明するスタッフ。 写真3:日本ユニシスでチャリティー販売会 iPhoneを利用した、紙幣の金額を音声で読み上げるアプリのデモ 写真終わり これからの活動 2018年活動予定 (6月~12月) 表4:講座・職業訓練等 ○土曜講座 Wordでの画像操作、Web制作、社会保険などをテーマに実施予定 ○ワンポイント講座 Word・Excelの活用法などをテーマに実施予定 ○インストラクター養成講座 視覚障害者へのパソコン指導の基本を学ぶ講座として3回実施予定 ○タブレットサロン iPhone、iPadを学ぶ場として7回実施予定 ○在職者訓練 在職中の視覚障害者への職業訓練を実施予定 ○iPhone・iPad体験会 札幌市・鹿児島市)実施予定 表5:イベント等 ○インストラクター養成講座テキストを制作 表終わり 3ページ 会員に 「ちょっとインタビュー」 ○会員 飯山(いいやま) 知子(ともこ)さん  2009年入会 顔写真あり 失敗を恐れずに楽しくチャレンジ! Q: 現在、スパンでどのような活動をされていますか? A:ワードやエクセルのマニュアル作成、視覚障害者用ソフト一覧の更新作業などを行っています。 Q: 普段、お仕事など、どのようなことをしていますか? A: 神戸アイライト協会1)で困りごと相談や音声パソコンの指導などをしています。11月にはスパンとの共催で就労支援の講習会をビジョンパーク2)付近で行う予定です。ビジョンパークはロッククライミング体験やヨガ、音声調理家電、オトングラスほか便利グッズを気軽に体験できる場所です。みなさん、どうぞ、神戸にお越しくださいね! Q: 他に、趣味などありますか? A: 視覚障害者向けのメイクセミナーを見学し 鏡を見ずに眉が描けるようになりました。趣味でドラムのレッスンを受けています。ドラムは両手両足バラバラの動きをするので脳トレにもなっています。音楽に合わせてただただリズムを取るだけですがとっても楽しいです。ドラムに視力は必要ありません。みなさんにもぜひ、体験してもらいたいです。 Q: スパンの今後の活動について思うことを教えてください。 A:ポイントを押さえて体系的に行う現在の形を大切にしてほしいです。そのうえで、例えば就労体験など何かに特化した失敗談など本音をさらけ出して話ができるような、肩の力を抜いたイベントがあってもよいのではと思います。。 Q: 会員のみなさんへのメッセージをお願いします。 A:がんばりすぎると固くなってしまいます。人に頼ることも時には大切です。失敗を恐れずに肩の力を抜いて楽しくチャレンジ!一緒に前に進んでいきましょう!!。 聞き手:平川 純 1) 神戸ライトサロン 神戸アイライト協会     http://eyelight.eek.jp/ls301.html#readstart 2) ロービジョンケアフロアの運営 公益社団法人NEXT      VISION(ネクストビジョン)      https://nextvision.or.jp/project/carefloor ○会員 新井(あらい) 愛一郎(あいいちろう)さん 1999年創立時より 顔写真あり スパンでわくわくを実現していこう! Q:現在、スパンでどのような活動をされていますか? A: タブレットサロンの講師をしています。今年はJTの助成金を受けて札幌と鹿児島にタブレット講習会の講師として参加します。地元の視覚障害者とサポーターをつなぐきっかけになればいいと思います。 Q:スパン発足時のお話を聞かせてください。 A: WINDOWS95が出始めた時期でした。ノートパソコンはなく、詳しい人が古いデスクトップパソコンを組み立てたものを使って勉強会をしていました。狭い部屋にみんなで集まって、「このままでは視覚障害者は社会から取り残されてしまう」、「自分たちでやらなければ」と活気にあふれていました。「500円会議」と称して食べ物や飲み物を取りながらわいわい楽しく活動してました。スマートフォンの普及による社会の状況があの頃と似ているように思います。視覚障害者が社会から取り残されてしまわないようにタブレットやスマートフォンの楽しさや便利さを視覚障害者に伝えていきたいと思います。 Q: これからやっていきたい活動はありますか? A: 発展途上国の視覚障害者のサポートをスパンでしていきたいです。留学生との交流やITサポート、就労など発展途上国の視覚障害者の現状を把握したうえで幅の広い支援をしていきたいです。 Q: スパンの今後の活動について思うことを教えてください。 A: 職業講習など現在行っている活動を大切にしながら、集まることによって生まれる活力を引き出すことのできる会であってほしいと思います。 Q: 会員のみなさんへのメッセージをお願いします。 A:スパンはみなさん自身が楽しいと思うこと、わくわくを実現する可能性をもった場です。役員の企画を待つのではなく、MLなどを活用してみなさんの「やりたいこと」を提案してください。きっと、スパンでなら実現できると思います。そして、ライングループなどITを活用してつながりを広げてさらなる視覚障害者の活動の場を作り出してほしいと思います。 聞き手:平川純 4ページ目 SPANの活動紹介 可能性を広げるタブレットサロン   タブレット端末やスマートフォンの急速な普及の中で、そのままにしていたら視覚障害者は取り残されてしまう、素晴らしさをもっと実感して、活用できるようにしたい。こんな思いでタブレットサロンを開催しています。  タブレットサロンは、定期的にタブレット端末やスマートフォンを実際に体験できる場です。  初めて触れる方や、持っていても自由に操作できない方のため、うまく活用している人との交流により、「自分にもできるんだ」という自信を少しでも持っていただく体験の場です。  音声操作で行う方、拡大や見やすさを考えて操作する方、それぞれに対応して行っています。  参加者に合わせて進めていますので気軽に参加していただけます。 毎月第3水曜日の14:00から16:00まで、当会の教室で行っています。 写真:リラックスした雰囲気で開催されるタブレットサロン 写真終わり SPANでは、職業スキルの向上を目指す方はもちろん、ICTスキルを高めたい方、また支援をする方のために 以下の講座を実施しています。  ・個々のニーズに応じてマンツーマンで学ぶ個人対象講座  ・数名で同じテーマを学ぶグループ講座、  ・無料通信ソフトSkypeやFacetimeなどを利用した遠隔講座  ・就労中の視覚障害者を対象とした在職者訓練、社員研修  ・テーマを決めて実施する夜間講座、土曜講座、ワンポイント講座  ・視覚障害者への指導をする方を対象としたインストラクター養成講座 ○ご寄付のお願い SPANは公的な補助を受けず自主運営している団体です。皆様からのご寄付が活動を維持するための貴重な財源となっています。私たちは視覚障害者がICTを使いこなし、自立と社会参加、就労していけるよう活動しています。 この活動に共感していただける方のご支援をお願い致します。 振込先: 郵便振替口座 00110-4-183315 スパン寄付金口 ○写真:SPANの教室、講習の様子 「スカイプラザ」の愛称で呼ばれ、コンパクトでアットホームな雰囲気です 写真終わり 奥付 2018年7月10日 発行 特定非営利活動法人 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 〒108-0014 東京都港区芝5-29-22 フェリス三田1103 電話&ファクシミリ 03-6435-1614 E-mail office@span.jp URL http://www.span.jp/ Facebook https://www.facebook.com/span.jp Twitter https://twitter.com/npo_span 以上 広報誌 SPAN2018 第5号 終わり