視覚障害者への在職者訓練実施から見えてきたこと 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN ) 北神あきら、上田喬子、高西透江、堤由起子、中川文、松坂治男 ●この資料は、社会福祉法人日本盲人福祉委員会からのご支援により作成しました。 目的: SPANが2013年から現在まで45名に対して実施した在職者訓練の内容を分析し、職場や在職者が必要としているPCスキルを明らかにするとともに、在職者に対する職業訓練のあり方についての指針とすることを目的とする。 方法 実施した訓練の内容(時間数、OS、アプリケーション、スクリーンリーダー、画面調整等)について集計し分析した。 なお、SPANの在職者訓練は、内容・日程とも職場・在職者の希望するカリキュラムで実施している。 (1) 環境(OS、Office バージョン、操作環境:n=45) (2) 年度別実施件数と訓練時間数別件数 ●年度別実施件数 ●訓練時間数別件数 (3) 訓練内容別件数 (4) アプリ別機能別件数 結果 訓練時間数は40時間台が中心だった。 OSはWindows7 、Officeは2010での訓練が最も多かったが、ここ2年間は新しいバージョンも増えている。 また、対象アプリケーションは、当初はWord・Excelが中心だったが、最近は PowerPoint 、インターネットの希望が増えているほか、Office365 を希望するケースも出てきた。 スクリーンリーダーは、JAWSのほか、最近はPC-Talkerでの訓練の希望が増えている。また、再受講者も5名いた。 実施件数は、2017年度10件、2018年度9件と、この2年で全体の約半数を占めている。 考察 訓練件数増加の要因は、SPANの訓練が認知されてきたこともあるかもしれないが、就労する視覚障害者が増加傾向にあることのほか、職場や在職者自身がスキルアップの必要性を感じていること、スキルアップが、職務拡大・職務充実につながることが理解されてきたことによるのではないだろうか。 訓練内容も、Word・Excelの基本操作に留まらず、画像・グラフの操作、色の設定などのほか、さまざまなアプリケーションの習得と、高度化、多様化している。 結論 就労する視覚障害者の増加と業務の高度化に伴い、職業スキルの向上を図る場の確保が必要である。 また、職場ごとに状況が異なるため、柔軟な訓練体制も必要だといえよう。 しかし、在職者が訓練を受けられる場は限られており、公的な職業訓練実施の体制作りが急務だと考える。