在職者訓練の内容から見えてきた就労中の視覚障害者が必要とするPCスキル 視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN) 目的・実施方法 SPANが公益財団法人東京しごと財団から受託している在職者訓練のうち、2020年から2024年に実施した44件を分析して就労中の視覚障害者が必要とするPCスキルを明らかにすることにより、よりニーズに合った就労支援を行うための指針とすることを目的とする。各訓練の記録から受講者のPC環境、学んだ内容を抽出し、数値的な分析を行った。 ■年度別受託件数と時間数 年 件数 日数 時間数 2020年 10 152 595 2021年 8 114 373 2022年 12 154 517 2023年 7 96 314 2024年 7 82 303 ※複合グラフ(主軸は縦棒グラフ:件数、第2軸は折れ線グラフ:日数と時間数) ・平均日数:13.6日 ・平均時間数:47.8時間 ■ 受講者のPC環境 □OS Windows10 98%、Windows11 2% □ Office系 Office2010 2%、Office2013 6%、Office2016 31%、Office2019 2%、Office2021 4%、Office365 45%、Google Workspace 10% ※円グラフ □ スクリーンリーダー、アクセシビリティ PC-Talker 48%、JAWS 17%、NVDA 2%、ナレーター 2%、拡大鏡 13%、ハイコントラスト 13%、ZoomText 6% ※横棒グラフ ■ 在職者訓練の内容 □ Excel   セルの書式 10.6% オートフィルター 9.4% 行・列・シートの操作 8.9% 並べ替え 8.9% 関数 8.9% 印刷 8.3% 条件付き書式 7.8% 入力規則 7.2% ピボットテーブル 6.1% セルの移動 5.0% 高率的な入力 5.0% グラフ 5.0% マクロ・VBA 4.4% コマンド選択 2.2% セルへの入力 0.8% 集計 0.8% アウトライン 0.6% ※表形式 □ Word 文字・段落書式 14.9% ページ設定 13.5% コマンド選択 13.0% 表の操作 13.0% 画像 10.6% 変更履歴・コメント 9.1% カーソルの移動 8.2% 目次付き文書 7.7% 差し込み印刷 7.7% 単語登録 1.4% 検索・置換・ジャンプ 0.5% 印刷 0.5% ※表形式 □ PowerPoint スライド閲覧 20.6% 文字編集 20.0% Excel挿入 18.1% 画像挿入 18.1% スライドショー 16.9% 動画・音声挿入 4.4% スライドマスター 0.6% スマートアート 0.6% PDF変換 0.6% ※表形式 □ Outlook メール 47.6% 連絡先 30.2% 予定表 20.6% メモ 1.6% ※表形式 □ Access テーブル 25% クエリ 25% フォーム 25% レポート 25% ※表形式   ここまでで左側おわり ここから右側 □ Googleアプリ 年 Gmail Googleドライブ Googleドキュメント Googleスプレッドシート Googleチャット Googleカレンダー GoogleMeet Googleサイト 2020年 0 0 0 0 0 0 0 0 2021年 4 1 1 2 1 1 0 0 2022年 3 0 1 1 0 1 1 0 2023年 1 1 0 1 0 0 0 1 2024年 1 0 0 0 0 0 0 0 9 2 2 4 1 2 1 1 ※折れ線グラフとデータテーブル(主軸件数、年ごとの折れ線グラフ) □ ブラウザ、PDF閲覧 年 MyMail GoogleChrome Edge IE NetReader Adobe 2020年 1 4 4 3 1 8 2021年 0 5 5 2 0 5 2022年 0 5 7 0 0 9 2023年 0 2 4 0 0 5 2024年 0 2 5 0 0 6 ※折れ線グラフとデータテーブル(主軸件数、年ごとの折れ線グラフ) □ 通信アプリ 年 Zoom Teams iPhone 2020年 2 2 0 2021年 0 2 0 2022年 1 7 0 2023年 1 3 1 2024年 1 5 0 ※折れ線グラフとデータテーブル(主軸件数、年ごとの折れ線グラフ) ■結果 受講者のPC環境は、OSは1件を除いてWindows10、Office系ではMS365が5割近く、Google WorkSpaceも1割が導入していた。画面読み上げソフトは、PC-TalkerとJAWSが大半だった。 訓練内容は、Word、Excelとも基本的なものが多かった。また、PowerPointやOutlook、Adobe、Teamsも多くが学んだ。 考察と今後への展望 訓練の中心はMS Officeだが、その他のアプリケーションについても一定のニーズがあることが分かった。また、画面読み上げソフトはPC-Talkerが多かったが、JAWSも一定数が使用していた。そして、TeamsやZoomといった通信アプリは増加傾向だったが、これはコロナ禍で在宅勤務やオンラインでの会議などが増えたことが要因の一つと考えられる。 就労中の視覚障害者が必要としているPCスキルは多様化してきており、訓練機関にもそれに対応することが求められているが、必ずしもできていないのが現状。今後は、各訓練機関が持つノウハウや教材などの情報を関係者の間で共有するとともに、支援できる人材の養成が必要だと考える。